連載#2 Webサイトの現状把握に欠かせないポイントとは?
前回は「サイトの目的を明確にすること」をテーマに経営戦略、事業戦略、機能別戦略のレイヤーで整理して、機能別戦略にあたるサイトの成果が上位戦略に貢献する構造についてお話しました。 今回は、これらのポイントを達成する為に必要な「現状把握」について解説します。現状を知ることで、目標となる成果を得るまでの道のり(課題)を知ることができます。このプロセスは戦略策定の準備工程にあたり、戦略策定の精度に関わる重要な工程です。
自社サイトの現状をどの程度把握できていますか?
「サイトの状況を報告してほしい」と言われたらどのような内容の報告をしますか?
おそらくこのような項目を挙げるのではないでしょうか。
- サイトのアクセス状況
- 獲得 / コンバージョン数
- サイトの運用状況
いずれも間違っていませんし、どれも重要な視点だと思います。
サイト構築する際の現状把握も同じで、テーマによって見るべきポイントが変わってきます。サイトを構築する場合の多くはリニューアルだと思いますので、その前提で現状把握すべきポイントを例示してみます。
<現状把握するポイント例>
1. アクセス状況(UU・PV・直帰率・平均滞在時間などの数値)
・サイト全体
・集客ページ(ランディングページ・コンバージョンページなど)
・アクセス属性(デバイス・曜日・時刻など)
・集客チャネル(訪問経路別のアクセス数・キーワードなど)
2. ヒューリスティック調査(専門家による主観的な課題抽出)
・ユーザビリティ・アクセシビリティ
・コンバージョンおよび回遊導線
・クリエイティブ
3. 運用上の課題
・担当者が感じている課題
・関係者が感じている課題
4. 市場分析
・競合サイトおよびベンチマークサイトの抽出から自社の立ち位置把握
・競合サイトのアクセス状況との比較
大きく4つの例を挙げてみました。
分類をするとデータをもとにした客観的なものと関わっている人が感じている主観的なものに大別することができます。
次の章で、各項目をもう少し掘り下げてみます。
データをもとにした客観的な現状把握
データをもとにした現状把握をするためには、データを取得するためのツールの導入が前提となります。Google Analyticsのようなものもあれば、BIツールのように提供されているものまで様々です。ツールの選定については触れませんが、もし検討をされている場合は、お試し利用できるものでまずは試してみるのがよいと思います。
アクセス解析
アクセス解析のツールはすでに導入されている方も多いと思います。計測タグをサイトに設置するWebビーコン型が一般的になると思います。
現状把握する観点は、全体を俯瞰してみることと、重要なポイントを掘り下げてみることの2つになります。
■全体を俯瞰してみる
サイトの現状を大まかに把握するために、アクセス解析を始めてから(もしくは前回のリニューアルから)の長期間のデータがあると望ましいです。
例えばPVの推移をみる場合は、伸長傾向にあるのか、横這いなのか、下降傾向にあるのかをまず把握します。
また季節で変化があるかも把握します。季節をみる場合は、年単位のデータが確認できると前年度比較ができ、判断しやすいと思います。
ずっと一定推移することは稀で、どこかで分かりやすく変化していたり、上がったり下がったりを繰り返しながら推移していきます。注意深く変化を観察して気になるポイントを掘り下げて確認すると精度が向上します。
■重要なポイントを掘り下げてみる
サイトで重要なページはコンバージョンページです。明確なコンバージョンがなくても、ユーザーに見て欲しいページがそれにあたります。今回は明確なコンバージョンページを例にして進めます。
まず確認するのが、コンバージョンページのアクセス数と獲得したコンバージョン数です。コンバージョン率が低い場合、そのページに何らかの課題が潜んでいる可能性があります。
次にコンバージョンページに至る過程を確認します。逆引きをしていくことで、コンバージョンページに来訪するユーザーの行動を把握することができます。コンバージョンページへの遷移目的が明確になれば、そのページへの送客数を増やすことで、コンバージョンアップが狙えます。
ラソナでは、Google Analytics 4講座をお客様に実施しております。
ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
競合サイトの状況把握
他社サイトのスコアを正確に把握することは難しいですが、弊社では積極的にツールを用いて他社サイトの分析を行っております。一例までに弊社では、株式会社ヴァリューズが提供するデータ分析ツール「Dockpit」を利用し、競合サイトやベンチマークサイトの状況を把握しています。
弊社がどのようにDockpitを活用しているか、一部紹介させていただきます。
■基本項目
Dockpitでは、来訪ユーザー数やPV数、1人あたりのセッション数、平均滞在時間、直帰率をみるだけで、ざっくりと競合サイトの状況を知ることができます。そのため、例えば訪問数やPV数に大きな開きがあるような場合には、集客構造をみることで紐解くことができます。
■集客構造
また、Dockpitでは自然検索、広告、外部サイト、ソーシャル、ノーリファラーごとに把握できるので、単純に訪問数だけをみるよりも具体的に状況を把握をすることができます。
例えば、自然検索の流入が多いのであれば、キーワードやランディングページを分析することで、サービスページで集客しているのか、コラムなどのページで集客しているのか知ることができます。また広告による集客が多い場合、定常的に予算投下しているのか、スポットで来訪促進をしているのか把握できるだけでなく、競合のプロモーション計画をイメージすることにも繋がります。
競合サイトは分からない、と決めつけてしまうと自社の状況だけで判断することになり、大きなリスクになる場合があるため、外部ツールを使ってなるべく広い視野で競合まで見渡した現状把握を弊社では推奨しています。
主観的な現状把握
客観的な分析だけでなく、主観的な現状把握も重要です。
主観が糸口になり、客観的な分析の精度を上げることもありますし、ニーズを把握して応えることで、利用者にやさしいサイト構築が実現できます。
ここでは2つの手法をご紹介します。
■ヒューリスティック調査
サイトリニューアルするときの一般的な手法です。サイトの担当者や制作会社が実施します。
目視でサイトを確認し、改善ポイントがどこにあるか抽出するヒューリスティック調査ですが、自社サイトはあまり丁寧にする必要はないと考えています。なぜなら、調査を実施しなくてもリニューアル時に多くのことが改善されるためです。サイトリニューアルの必要性を上申する場合などには、詳細までまとめる必要があるかもしれませんが、そうでない場合は、担当者が改善したいポイントをまとめ、制作会社から改善点を挙げてもらいマージをするなど、時間をかけずに対応するのがよいと思います。
一方、競合サイトは時間をかけて調査を実施する必要があると考えています。
自社サイトは改善視点で行いますが、競合サイトは逆に優れている点を抽出する調査になります。競合は比較検討される場面が多いため、横並びで見たときに見劣りしないようにする必要があります。また、競合のラインナップや訴求ポイントを把握することで、戦略策定する材料になります。競合のヒューリスティック調査は、前述した「市場分析」とあわせて実施するとより効果的です。
■関係者インタビュー
運用状況によって関係者が変わりますが、例えば商品の販売促進を目的としたブランドサイトで考えてみましょう。関係者は、サイト担当者、営業担当者、商品企画担当者、カスタマーサポート担当者などが挙げられます。
・サイト担当者
サイト全体の概要をインタビューします。またサイト運用における課題なども抽出できるように、チーム体制や運用フロー、年間の計画度をヒアリングします。
・営業担当者
お客様と商談をするうえで、サイトに必要な掲載情報や機能をヒアリングします。サイトを単体で考えずに、クロージングまでを視野に入れた構築ができるように全体像を把握します。またお客様の傾向やニーズなどもあわせて把握できるとサイトの訴求力が向上します。
・商品企画担当
商品特長や競合商品の動向、市場トレンドについてインタビューします。サイトなど公開されているものだけでは把握できない情報も掴むことができ、競合との差別化を図ることにもつながります。
・カスタマーサポート担当
お客様から寄せられる要望や疑問点などを把握します。あらかじめサイトに情報を掲載することで、信頼を得ることにもつながりますし、お問い合わせ削減なども期待できます。
多方面から声を集めることで、より詳細に立体的に状況を把握することができます。インタビューで得た情報を整理、分析することで、サイトのあるべき姿が見えてきます。
またこうしたインタビューを実施することで、共通理解が生まれます。この共通理解が今後の事業発展にとって貴重な資産になると考えています。
おわりに
今回は現状把握についてお話をさせていただきました。項目が多岐に渡るため人的なコストがかかりますが、きちんと把握をしないとあるべき姿は見えてこないと考えています。
日常的に情報収集をすることで、いざというときのコストを下げることもできますし、リニューアルを待たずに改修するポイントがみえてくることもあります。ぜひやれるところからでも着手してみてください。